2011年、私たちは通勤や通学の「ドア to ドア」移動を実現する折りたたみ自転車の開発に着手しました。このプロジェクトには具体的な目標が必要だと考え、誰でも気軽に公共交通機関へ持ち込める折りたたみ自転車の条件として「国際線旅客機の客室内に持ち込み可能なスーツケースと同等のサイズに折りたたむ」すなわち3辺の合計115cm以内に折りたためる自転車を目指していました。しかし、開発過程でこの目標が達成不可能であると感じ、公に出来ませんでした。半世紀以上前に英国のB社から発売された折りたたみ自転車の折りたたみサイズは58.5cm+56.5cm+27cm=142cmですが、以来、誰も超えられない壁となっていました。それでも私たちは挫折せず27cmもの大幅な更新を目指す前人未踏の挑戦を続けています。新素材や技術革新の可能性を信じ、その時が来るまで知識と技術の研鑽を積み、折りたたみ自転車の開発に情熱を注いでいます。

 2023年末、突然、スペースデブリの問題に深く取り組むことを決意しました。この強い動機は、スペースデブリの除去に関する革新的なアイディアを抱き、それを誰かと共有したいという強い願望から生まれました。以前、PATTO BIKE 451のプレリリースでお世話になったよろず支援拠点には、多様な分野のコーディネーターが在籍しています。彼らなら、私のアイディアを理解し、フィードバックを提供してくれると考えて、完成予定のPATTO BIKE 16インチのプレリリースの相談と並行して、彼らとのアポイントメントを設定しました。

 2024年1月2日、台中市南部に位置するJ社を訪問し、PATTO BIKE 16インチの打ち合わせを行いました。しかし、期待していた試作車は未だ完成していませんでした。これは、1年以上前から、何度も日本と台湾を往復して手抜かりのない準備を行ったにも関わらず、試作車が一度も完成していないため、私の運勢に疑問を感じざるを得ませんでした。しかし、私は気持ちを切り替え、問題解決のため根気よく話し合いました。その際、社長室に偶然置かれていたチューブではない板状のアルミ製リア・フレームに目を引きつけられ、特に使用予定はありませんでしたが、PATTO BIKEにも応用可能であることを確認しました。この経験は、予想外の困難に直面したときでも、新たな視点を持つことの重要性を後に教えてくれました。

 2024年1月4日早朝、成田空港に到着した私は、WBGマリブイースト幕張の23階にあるよろず支援拠点に車で向かいました。会議はPATTO BIKE 16インチのプレリリースの打ち合わせから始まりました。しかし、いきなり頭をハンマーで2~3発殴られたような衝撃を受けました。特別なアドバイスを頂いたわけではありません。PATTO BIK16インチが、他車と比較して如何に優れているか、私が熱く語った内容を、コーディネーターの方がホワイトボードに比較表にしてくれました。私は、比較表を漠然と眺めながら目くそ鼻くそレベルだなと気づきました。その瞬間、私の意識は宙に舞い上がり、会議室の天井から自分自身を見下ろし、自分は、すごく愚かな人間だと自覚しました。過去13年間の記憶が走馬灯のように蘇り、私は自分の原点に立ち返りました。そして、他車とドングリの背比べをするために折りたたみ自転車開発を始めたわけではない。私には避けて通れない使命があることを悟りました。通勤や通学に「ドア to ドア」で利用できる折りたたみ自転車を作るという、果てしない夢を追い続けるため、直ちに行動を起こす決意を固めました。この経験は、目標を明確に定め、それに向かって精一杯努力することの大切さを、改めて私に教えてくれたのです。

 2024年1月7日早朝、京成成田駅を出発した私は、久しぶりの電車の旅を楽しんでいました。車窓から広がる風景と電車の揺れが心地よく、新たな折りたたみ自転車のアイデアが次々と湧き上がってきました。初めに、1月2日にJ社で目にした板状のアルミ製リア・フレームを利用することを思いつきました。さらに走行性能を追求することを一旦脇に置き、5段変速でも十分に機能すると考えたのです。そして、新たな3次元折りたたみ機構のアイディアが閃いた瞬間に「果てしない夢の折りたたみ自転車」を実現できると確信しました。ローカル電車を乗り継ぎJR宇都宮駅に到着するまでの間に、この新たなアイデアが具体化していきました。それは、新たな旅の始まりであり、新たな折りたたみ自転車誕生の瞬間でもありました。